仲間への勧誘はルフィの魅力がよく出ている言葉の集まりだ。
相手に合わせた言葉のかけ方を本能で察知して、それをストレートに口に出す。
打算のない言動一致の言葉が、彼の周りにいる人間を否応なき決断の場面に立たせる。
>ロロノア・ゾロ
ここでおれと一緒に海軍と戦えば政府にたてつく悪党だ
このまま死ぬのとどっちがいい?
尾田栄一郎『
ONEPIECE 巻一 ROMANCE DAWNー冒険の夜明けー』 集英社(ジャンプコミックス) 1997.12 p.143
ゾロは信念と誠実の人間だ。
“世界一の大剣豪”には己が生き方に恥じない仕方で成り上がると固く誓っているだろう。
だからルフィが海賊の仲間を探していると言ったときに、「自分から悪党になり下がろうってのか ご苦労なこって・・・(尾田 1997.12 p.98)」と断っている。
しかし、ルフィがゾロの通そうとした筋を踏みにじるヘルメッポを無視せずに殴ったこと、大切な刀を取り返して来たことを受けて仲間になる決意をする。
刀を取り返して来ると言う行動はなんとも象徴的に描かれたストーリーだ。
ゾロは刀や剣のことを“宝(尾田 1997.12 p.111)”だったり“魂(尾田 1999.10 p.64)”だったりと表現する。
まさしくルフィが取り返したのは、ゾロの魂=気概だった。
ゾロが、ルフィの仲間になることを決意したのは、ルフィがゾロの気概を守ったことに起因する部分が大きいのではないだろうか。
その上でルフィは“とどめ”とも言えるような言葉で最終決断を迫る。
ルフィの言葉自体に他意はない。
言葉通りである。
だがゾロには、きっとこう聞こえただろう。
生き延びて親友との約束を果たすか?
それとも、己をないがしろにする権力に従って死ぬか。
考えることもない。
己を軽んじるもののために、親友との約束を果たせぬままにただ何もせず死ぬ選択を選べるわけがない。
そう考えて読むとき、刀を握ったゾロがルフィに突きつけた条件も確認程度のもののようだ。
「さそったのはてめェだ!! 野望を断念するような事があったらその時は腹切っておれにわびろ!!!(尾田 1997.12 p.150)」
「それくらいなって貰わないとおれが困る!!!(尾田 1997.12 p.151)」
ゾロは苦笑を浮かべるが、実際はどう思ったのだろう。
まるごと受け止める器の大きさに嬉しくなったのか、他人から見ればバカだと思われそうな自分たちの大き過ぎる夢のような話が可笑しくなったのか。
ともあれ麦わら海賊団の旗揚げは、この出会いから始まることになる。
>ガイモン
・・・・・・・・・
だっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!
まァ くよくよすんなよ おっさん!!20年でおれ達が来てよかったよ!!
あと30年遅かったら死んでたかもな!!!
これだけバカみちまったら後は“ワンピース”しかねェよ!!もう一回おれと海賊やろう!!
尾田栄一郎『
ONEPIECE 巻三 “偽れぬもの”』集英社(ジャンプコミックス) 1998.6 p.113
ガイモンは空の宝箱を20年間守ってきた。
その箱の中に宝があるものと信じて。いや時には自分を騙しながら守ってきたのかもしれない。
そんなガイモンの気持ちを汲み、ルフィは一瞬言葉に窮する。
ルフィの沈黙は考える間だったと筆者は推察する。
迷った末にルフィが出した結論はこうだ。
失敗があったらやり直せばいい。
だからもう一度、挑戦の海に出ようと誘ったのだ。
結果的には、守るべきものを持ってしまっていたガイモンに断られる事にはなるが、ルフィの投げた言葉はガイモンにとってこれからを生きる力になることだろう。
言葉を通じて、人と人は結び付いていく。
なぜだかそう感じてならない印象的な別れだと感じる。
>ウソップ
おれ達もう仲間だろ
尾田栄一郎『
ONEPIECE 巻五 “誰が為に鐘は鳴る”』集英社(ジャンプコミックス) 1998.10 p.121
別々に船出をしようとするウソップを引き留めて、不思議そうな顔でルフィは問う。
互いに命を賭して困難を乗りきった。
目指す場所も変わらない。
互いに相手を認めあってもいる。
なぜわざわざ別々に行かなければならないのか。
>ナミ
ナミ!!!
お前はおれの仲間だ!!!!
尾田栄一郎『
ONEPIECE 巻十一 “東一番の悪”』集英社(ジャンプコミックス) 1999.12 p .71-2
ナミは気付かずにずっと一人で戦っていた。
村の人間はナミの邪魔にならないようにとナミに気付かれないように必死で戦っていた。
そこに相互理解というコミュニケーションはなかった。
それを知ってか知らずか、(恐らく本能的に察知しているという状態だと考えられる)ルフィははっきりとナミに呼び掛け宣言する。
>クロッカス
船医!?本当かよ!!
じゃ うちの船医になってくれ
尾田栄一郎『
ONEPIECE 巻十二 “伝説は始まった”』集英社(ジャンプコミックス) 2000.2 p.94
ルフィの勧誘は老若男女を問わない。
ただ、自分の認める相手にストレートに声をかける。
クロッカス医師にたいしてもそれは変わらない。