何もできねぇから助けてもらうんだ!!!
(中略)
俺は剣術を使えねェんだコノヤロー!!!
航海術も持ってねェし!!!
料理も作れねェし!!
ウソもつけねェ!!
俺は助けてもらわねェと生きていけねェ自信がある!!!
モンキー・D・ルフィ@尾田 栄一郎『ONEPIECE10』p.177 集英社 1999.10


誰に向けた言葉か?
①アーロンに対して
ルフィは戦闘中に相手とよく話す。
自らの立ち位置、相手との違いをはっきりさせ、争う理由を明確にするためだ。
しかし、私にはこの行為が、余計な争いを避けるために思えてならない。
例えば、『ONEPIECE5』でクロネコ海賊団との争いが描かれているが、
p.17で、「もっかいウソップを笑ったら殺す」
p.87で、「お前らだって潰してやるから覚悟しろ!!」(ともにルフィの台詞)
という言葉で威嚇してはいるものの、キャプテン・クロを倒して後は追撃をしていない。
クロとの戦闘で力尽きたことも考えられるが、部下の海賊をなぎ払うことなどルフィには問題はないだろう。
つまりそもそもルフィというキャラクターに、潜在的には余計な戦闘は避けるという本能もしくは身に付いた性質が備わっていることの現れだ。
(※ちなみにもし後天的に身に付いた性質なら、シャンクス譲りだと推察する)
そしてこの性質が例えアーロンという、虐殺もいとわないキャラクターに対しても十分に発揮されている場面だと私には思えるのだ。
ルフィは言葉を通してまずは考えを改めよと語っているのである。
もちろんそれが叶わない場合は鉄拳制裁なのだが、マンガなので、この行動についての是非は控えさせてもらう。
②仲間たちに対して
ルフィは率直な性格だ。
仲間たちに対しても、照れも臆しもせず語る。
“仲間”というものに対してのルフィの考え方がよく現れた台詞だと感じる。
ルフィの言う“仲間”とは、それぞれが己の持っている能力により、助け合い支え合う集団のことだ。
自分にはその能力はないけど、これから生きていく、あるいは目標を達成する上で必要な能力を持つもの同士が集まり、互いが力を尽くしながら、困難にも立ち向かう。
ルフィの持つ組織のイメージの一部が具体的な例をもって表現された形がこのような言葉になったのだろう。
だからウソップはびびりながら戦い、こういうではないか。
今ここで全力で戦わなかったおれに
あいつらと同じ船に乗る資格なんてあるはずねェ!!
あいつらと本気で笑いあっていいはずがねェ!!!!
ウソップ@尾田 栄一郎『ONEPIECE10』p.119 集英社 1999.10
ルフィとウソップの性格や戦い方は反対に見えるが、実は一番通じあっているのではないかと私は思う。
③一人で頑張っている人に対して
≒ナミへ。とも言えるかも知れないが、あえて大風呂敷を広げてみたい。
と言うのも、もはや世界的なマンガになっている「ONEPIECE」。
なぜにこれほどまでの人気なのかということを考えれば、ストーリーやキャラクターの魅力もさることながら、「ONEPIECE」という話そのものが持つ高いメッセージ性が人々の心を動かし、感動させ、共感させていると考えられるのではないか。
なぜ人々を惹き付けるのか。
一片にはモンキー・D・ルフィという人間が、登場人物のみならず、読者まで、そのカリスマ性によって仲間へと引き込んでいるからではないか。
ルフィは言うのだ。
お前の力は認める。
だけど、一人ではできないことばかりだから一緒に頑張ればいいんじゃないか。
このメッセージを受け取った人がどれだけ救われているのだろうか。